ミシュラングルメは美術館で ! 心も味覚も満足する美術館のレストラン ~芸術も食文化もフランスに負けられない!イタリア編~

一流シェフが美術館のレストランで腕を振るう、そんな動きはパリにとどまりません。
美術品の質と量、そして食文化ではフランスに負けてはいられないというイタリアも、この潮流に乗ろうとしています。
イタリア各地の美術館と著名なシェフたち
英国を代表する建築家デイヴィッド・チッパーフィールド(David Chipperfield, 1953~)が設計を手がけた「ミラノ文化博物館 (MUDEC)」 には、ミシュランの四つ星を獲得したエンリコ・バルトリーニ (Enrico Bartolini, 1981~)が自らの名を冠したレストランをオープン。「モダンなクラシック料理」を哲学とするバルトリーニの料理は、ここでも健在と評判になっています。
また、同じくミラノの「トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム (Triennale Design Museum)」 にはステファノ・チェルヴェーニ (Stefano Cerveni, 1969~) が登場。「テラッツァ・トリエンナーレ (Terrazza Triennale) 」と名づけられたチェルヴェーニのレストランからは、スフォルツェスコ城をはじめとするミラノのパノラマも堪能できるため、ミラノ市民だけではなく観光客にも人気のスポットとなっています。
2018年春新施設である「タワー(Torre)」の竣工をもって完成したプラダ財団のビルは、オランダの建築家レム・コールハース (Rem Koolhaas, 1944~) による設計で早くもミラノの新たなシンボルとして注目されています。
このアートな複合施設内に設置されるレストランのシェフを誰が務めるのか、長らくベールに包まれてきましたが…4月20日のオープンと同時に、その名が公表されました!
財団ビルの6階にオープンするレストランは、アメリカのモダニズムを代表する建築家フィリップ・ジョンソン (Philip Johnson, 1906~2005)が、1958年、ニューヨークの「フォー・シーズン・レストラン」のためにあつらえた家具で飾られています。このレストランを任されたのは、ミラノ出身で現在イタリアで最も勢いがあるシェフの一人ファビオ・クッケッリ (Fabio Cucchelli) 。彼の創作性とワインの造詣の深さ、そして将来性を、プラダは高く評価したのでしょう。
イタリア屈指の高級ワインを生み出すピエモンテの州都、トリノは?
バローロやバルバレスコといったイタリアの高級ワインを生み出すピエモンテは、その豊かな土壌からトリュフやヘーゼルナッツなど食材のおいしさでも有名です。
そのトリノにはすでに、世界中のメディアに礼賛されたダヴィデ・スカビン (David Scavin, 1965~)がプロデュースするレストラン「Combal.Zero」が、「カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館 (Castello di Rivoli Museo D'Arte Contemporanea)」 内にあります。トリノにおいて、アートと食の融合の象徴的存在であるこのレストランは、トリノから15キロほど郊外にあるリヴォリ城内にあります。その創建が9世紀にまでさかのぼるといわれる「リヴォリ城 (Castello di Rivoli) 」が美術館となっており、レストランも近代的に改装されていますがミシュラン二つ星のスカビンの料理と美しい城との組合せは、予約も難しいほど大人気。
また、トリノの街の中心には1995年に近代美術と若い芸術家の育成を目的に設立され「サンドレット・レ・レバウデーニョ財団美術館 (Fondazione Sandretto Re Rebaudengo) 」があります。この館内にあるのが、レストラン「スパーツィオ 7 (Spazio7)」。若い世代ために設立された美術館のレストランに相応しく、シェフは1984年生まれのアレッサンドロ・メッカ (Alessandro Mecca) です。そして、美術館のテーマに寄り添うように、メッカも「コンテンポラリー」をキーワードにしたメニューを考案し、話題になっています。
そして、トリノのシンボルである「ヴェナリア王宮」に足を向ければ、ここにも世界を股にかけて活躍するシェフのレストランが!
イタリア王家サヴォイア家の宮殿であるヴェナリア王宮は、1997年にユネスコの世界文化遺産にも登録された歴史的建造物です。その王宮内には、ロンドンの5つ星ホテル「ザ・ペラム・ホテル」と4つ星の「ザ・フランクリン・ホテル」に三顧の礼を持って迎えられたアルフレード・ルッソ (Alfredo Russo, 1968~) が指揮を執る「ドルチェ・スティル・ノーヴォ(Dolce Stil Novo)」があります。13世紀イタリアの、精神の気高さを尊び愛をテーマとした文学運動「清新体」(Dolce Stil Novo)の名が冠されたレストランは、ミシュランやガンベロロッソからも高い評価を得ています。シェフのアルフレード・ルッソは、20代からその名を世界中に馳せてドバイやメキシコ、大阪などでもキャリアを築いきたカリスマ。
フィレンツェは「グッチ・ガーデン」にあのシェフが!
フィレンツェの行政の中心シニョーリア広場にある商業裁判所の「メルカンツィア宮殿 (Tribunale della Mercanzia) 」。1359年に建てられた歴史あるこの宮殿は、現在「グッチ・ガーデン(GUCCI Garden )」となっています。
今年、ギャラリーも含むこの複合施設内にオープンした「グッチ・オステリア ( Gucci Osteria da Massimo Bottura ) 」をプロデュースしたのは現在のイタリア料理界では最も有名なシェフ、マッシモ・ボットゥーラ (Massimo Bottura) です。その右腕として着任したのは、日本人シェフ紺藤敬彦(こんどうたかひこ)氏。ボットゥーラから、親愛と敬愛をこめて「タカ」と呼ばれる紺藤氏と奥様のカリメ・ロペス・コンドー (Karime Lopez Kondo) さんによって考案されたメニューを、重厚な歴史を感じる宮殿内のモダンなレストランで味わうことができます。まさに、イタリアの歴史と美術と食文化の粋の総結集といったところでしょうか。
最後に
今回ご紹介できなかった街以外にも、おいしいレストランを併設する美術館は数多くあります。美術館側も、集客のためには美術品以外の目玉を必要としているという事情があるからでしょう。美術品と美味の双方を、ひとつの施設の中で楽しむ、そんな優雅な休日はいかにもヨーロッパらしいですね。
- コラム
- カリメ・ロペス・コンドー
- デイヴィッド・チッパーフィールド
- フィリップ・ジョンソン
- ファビオ・クッケッリ
- カステッロ・ディ・リヴォリ現代美術館
- サンドレット・レ・レバウデーニョ財団美術館
- Spazio7
- アレッサンドロ・メッカ
- ヴェナリア王宮
- アルフレード・ルッソ
- ドルチェ・スティル・ノーヴォ
- 清新体
- 紺藤敬彦
- マッシモ・ボットゥーラ
- MUDEC
- エンリコ・バルトリーニ
- トリエンナーレ・デザイン・ミュージアム
- ステファノ・チェルヴェーニ
- テラッツァ・トリエンナーレ
- レム・コールハース
- プラダ財団
- ダヴィデ・スカビン
- Combal.Zero
- リヴォリ城
- メルカンツィア宮殿
- グッチ・オステリア
- グッチ・ガーデン
-
広島上空でピカッ、岡本太郎作品に原発事故付け足したチンポム 卯城竜太。人間の存在自体が自由なもの | 表現の不自由時代 04
2018 年 09 月 04 日 ARTLOGUE 編集部 -
なぜ女性器だけタブーなのか? 権力による規制に、アートの力で笑いながら疑問を投げかけるアーティスト ろくでなし子 | 表現の不自由時代 02
2018 年 08 月 20 日 ARTLOGUE 編集部 -
ルイ・ヴィトンや日清食品からの圧力のみならず、殺害予告、通報にも屈せず表現をつづけるアーティスト 岡本光博 | 表現の不自由時代 01
2018 年 07 月 23 日 ARTLOGUE 編集部 -
〈占い〉おとめ座の時期のポジティヴ・アート:占い師 ルーシー・グリーンの星占い的アート鑑賞のススメ
2018 年 08 月 30 日 ルーシーグリーン -
2018年 【東京】東京国立博物館周辺ランチ・グルメおすすめ7選!:腹が減ってはアートは見れぬ
2018 年 07 月 23 日 はこしろ -
声を大にして言いたい。「アートは育児を救う」。
2016 年 08 月 02 日 Seina Morisako -
世界最大級のアート・フェアなのに、超閉塞的なアート・バーゼルのお話
2018 年 06 月 26 日 黒木杏紀 -
モノが物語る力-ヤノベケンジ展「シネマタイズ」(高松市美術館)
2016 年 08 月 22 日 三木学 -
美術館4コマ漫画『ミュージアムの女』<br>「理想のタイプ」「出陣の合図」第1話~第10話<br>by 岐阜県美術館©︎宇佐江みつこ
2017 年 01 月 18 日 岐阜県美術館 -
芸術の都フランス・パリが日本一色に染まる! 大規模な日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」がまもなく開催。
2018 年 07 月 09 日 黒木杏紀 -
人工生命体「ストランドビースト」の生みの親テオ・ヤンセン氏インタビュー
2017 年 07 月 31 日 羽田沙織 -
名和晃平 金色に輝く巨大彫刻「空位の玉座」がパリ・ルーブル美術館に出現!黄金の玉座空位の意味は? : ジャポニスム2018
2018 年 07 月 28 日 黒木杏紀 -
アートとビジネスの融合イベントが実現。ARTLOGUE Meetup スタート
2018 年 09 月 19 日 ARTLOGUE 編集部 -
アートが身近に感じられる、ちょっと内緒の話
2016 年 07 月 17 日 黒木杏紀 -
賛否両論「先進美術館」構想。美術館の役割とは。そして人口減少時代における生存戦略はいかに。:アートをおしきせ 20180520
2018 年 05 月 20 日 ARTLOGUE 編集部 -
無料で美術鑑賞!?案外あった美術館の無料開放日:アートをおしきせ 20180511
2018 年 05 月 11 日 ARTLOGUE 編集部 -
新たな時代のジャポニスム旋風が巻き起こる、フランス・パリで日本の美を再発見~大規模な祭典「ジャポニスム2018」展覧会リポート!
2018 年 08 月 10 日 黒木杏紀 -
「大大阪モダン建築」とアート&カルチャー
2016 年 07 月 14 日 三木学 -
アートとこころ ~1.こころをアートで表現する!絵を描くことを通じて見えてくるものとは~
2018 年 03 月 17 日 佐藤セイ -
アートとこころ ~2.こころをアートで映し出す!見えない絵を見るこころの動きとは?~
2018 年 03 月 23 日 佐藤セイ

あなたのデスクトップにアートのインスピレーションを
ARTS WALLは、常にアートからの知的な刺激を受けたい方や、最新のアートに接したい方に、ARTLOGUEのコラムや、美術館やギャラリーで今まさに開催中の展覧会から厳選したアート作品を毎日、壁紙として届けます。 壁紙は、アプリ経由で自動で更新。