奈良美智が国内5年ぶりの個展『for better or worse』に込めた想いとは!?
左:《TwinsⅠ》2005 サムソン美術館リウム蔵、中央:《TwinsⅡ》2005 サムソン美術館リウム蔵、右:《ハートに火をつけて》2001 個人蔵
昔を振り返った時、誓い合った夫婦のように、良き時も悪しき時も(for better or worse)ちゃんとやってきたな。制作はいつも傍にあったな。まだ別れてないな。
奈良美智(メディアインタビューにて)
for better or worse に込めた想い
『奈良美智 for better or worse Yoshitomo Nara for better or worse』展は、作家が愛知県立芸術大学修士課程を修了した1987年から2017年までの歩みをたどる大規模な個展であり、これから描いていく作品たちへ向けられた決意表明でもあります。
今回、日本で初めて展示される作品が27点。国外から借用されたのは35点。。
また、実際の作家の部屋にある棚がそっくりそのまま再現され、324枚もの私物レコードや、小説に画集、写真集なども展示されています。
レコードが自分にとっての画集だった。男の人が半分水に入っているジャケットとかは、同じ絵を何枚も描いているし、何かメッセージを持っている女の子とかも、(レコードの)ジャケットにある。それを見て描いたわけじゃなくて、出てきちゃうんですよ。子供の頃に見たものが。
音楽を聴きながら、わからないジャケットを見ながら、英語もわからないけれど頭の中で知っている単語をつなぎ合わせて訳す。それが想像力、脳みその訓練になったと思うんですよ。
だから、それが(展示を見る人に)伝わるかわからないけれど、この壁を使ってレコードを並べてみたかったので、今回夢が叶ったという感じです。奈良美智(メディアインタビューにて)
会場2ヶ所では、実際に音楽も流れています。レコードが壁一面に並べられた展覧会のプロローグ的な場所では、作家自らミックスした全45曲を聞くことができます。
メディアインタビューの最中に、スタッフの方がその音楽のボリュームを下げた瞬間、
「これ(音楽)がないと、俺、ホウレンソウがないポパイみたいに弱くなっちゃうんだよ~」と照れくさそうに話す姿は、その日一番の笑顔でした。
また、自身がパーソナリティを務めるラジオ番組「渋谷のラジオ」で放送中の「渋谷親父ロック部」では、毎週、奈良美智氏自らセレクトした音楽と、その曲についての想いやエピソードを聞くことができます。もっと奈良美智氏について知りたいという方は、「渋谷親父ロック部」に入部(番組を聞くこと)することをオススメします。
アプリをダウンロードすれば全国どこからでも聞くことができます。
作品は「見る」のではなく「向き合う」
今回の展覧会は展示方法にもこだわりが。
豊田市美術館の展示室約1900㎡に、作品1点1点の間はたっぷりと空間が取られています。そのため、今回の展示では、作品を「見る」というより「向き合う」感覚。
一枚一枚、作品と向かい合って制作している作家の感覚を追体験できるのです。
また、今回の展覧会では作品がアクリル板に入っていたり、作品の前に金属の棒などで柵が作られたりすることもなく、絵画作品の繊細な絵肌を直にご覧いただけます。
むき出しの作品1点1点とじっくり向き合うと、少女の目の位置が微妙に修正されている様子や、髪の毛が塗りなおされている様子、絵肌の質感に至るまで克明に感じることができます。
展示を振り返って…
最初の方の作品に比べると、最後の方が豊かになってきている。隠してたものを全部出してきて、色なんかもわざと全部塗りきらなかったり、バックもいつもだったらもっと綺麗にバシッと塗っちゃうんだけど、塗らなかったり。ニュアンスで残す。雰囲気がオーラのように絵から出るように。気、オーラが出ていると思う。最近の作品の方が、より人間に近くなってて、最初の方の作品はイメージとしてはすごく強い感じで、漫画のようだとかっていう形容が似合うかもしれないけれど、自分がそれだけの人間だったわけで。
人ってやっぱり進歩すると思うので、昔できなかったことがどんどんできるようになってきて、それがニュアンスを出すことだったり、オーラみたいなものを絵から漂わせるコツだったり。上の絵(2階3階展示室の最近の作品)の方は、息苦しい位圧倒される感があるんじゃないか。と、うちのアシスタントが言ってました(笑)奈良美智(メディアインタビューにて)
作品と1対1で向かい合い、そのオーラを受け取った時、作品の中の人物はあなたに何を語りかけてくれるでしょう。この夏あなたも是非、体感してください。
奈良美智 for better or worse
Yoshitomo Nara forbetter or worse Works:1987-2017
会 期:2017年7月15日(土)~9月24日(日)
開館時間:10:00~17:30(入館は17:00まで)
休 館 日:月曜日(8月14日、9月18日は開館)
開催場所:豊田市美術館
観 覧 料:一般1500円(1300円) 高校・大学生1000円(800円) 中学生以下 無料
( )内は20名以上の団体料金、障碍者手帳をお持ちの方(介添者1名)、豊田市内在住または在学の高校生及び豊田市内在住の75歳以上は無料(要証明)
U R L:http://www.museum.toyota.aichi.jp/exhibition/2017/special/narayoshitomo.html
渋谷のラジオ https://shiburadi.com/
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