「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」 CURATORS TV
「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」のギャラリートーク
スピーカー
内田洋子
会場
会期
2013年10月12日~12 月23日
展示について
伝説の展覧会がいま再び。名画の登場人物や女優などに自らが「なる」という手法でセルフポートレイト作品に取り組み、国際的に高い評価を得ている現代美術作家、森村泰昌。1994 年に日本の美術館における初個展として原美術館にて開催した「レンブラントの部屋」展を再現し、「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」展を開催いたします。約20 年の歳月を経て同じ空間で甦る本展には、レンブラント絵画の魅力、人生の明暗、光と闇など、私たちが現在共有しうるテーマが多角的に提示されています。94 年の展覧会終了後、当館コレクションとなったシリーズ全作品で構成される本展は、森村泰昌の表現世界を改めて見つめ直す貴重な機会となります。 原美術館におきまして、今秋、「森村泰昌 レンブラントの部屋、再び」展を開催いたします。来年開催される横浜トリエンナーレ2014 で、森村泰昌はアーティスティックディレクターを務めます。今や、我が国を代表するアーティストとして知られる森村にとって、1994 年に当館で開催した「レンブラントの部屋」展は、日本の美術館で開催する初めての個展でした。同展出品作品はすべて原美術館に収蔵された後、たびたび紹介されてきましたが、全作品を一堂に会し展覧会を再現するのは今回が初の試みです。当館の空間に合わせて制作された「レンブラントの部屋」作品群が20 年の歳月を経て甦る本展は、森村泰昌の表現世界を改めて見つめなおす貴重な機会となります。作品制作や展覧会構成の過程を通して森村がたどりついた現代社会に関する考察は、今の私たちがなお共有しうるものです。 森村泰昌は、1985 年ゴッホの自画像に自ら扮したセルフポートレイトを発表、以後名画の登場人物に扮し、原作あるいはその時代背景に独自の解釈を加える作品を一貫して制作しています。1989 年、ベネチア・ビエンナーレ/アペルト88に選出され、国際的な注目を集めた後、横浜美術館、東京都現代美術館、東京都写真美術館などで大規模な個展を多数開催。2007 年度芸術選奨文部科学大臣賞、2011 年秋には紫綬褒章を受章し、日本を代表するアーティストの一人です。 原美術館では、17 世紀オランダの偉大な画家をテーマに、その人生の明暗から「自我」を深く探った「レンブラントの部屋」展(1994 年)、20 世紀メキシコ現代絵画を代表する画家の一人フリーダ カーロの人生、その愛と死を独自の祝祭的イメージで描いた「私の中のフリーダ」展(2001 年)を開催しました。また、館内のトイレを作品化したユニークな常設インスタレーション「輪舞(ロンド)」(1994 年)も、本展開催にあわせて新たな装いでお目見えします。 現代の「自我」を主題としていた当時の森村は、「自我」に取り組んだ先駆的存在であり偉大な画家であるレンブラントの人生を展覧会のテーマに据えました。 17 世紀オランダに生きた画家レンブラントは、膨大な数の自画像を今に残しています。近代的個人主義の黎明期に登場し「自分とは何か」という問いを突き詰めるべく、鏡と画布に向かったレンブラント。才能に恵まれた彼は、若くして富と名声を得ましたが、景気の後退とともに人気も衰え、寂しい晩年を過ごしたと伝えられます。可能性を模索する青年期、自信に満ちた壮年期、そしてもはや虚勢を張る必要もなく自己を直視する老年期。その時々の生き様を伝える自画像に、森村は自身を重ね合わせました。 真の自己を突き詰めた先人に対し「開かれた自我」を提唱する森村は、レンブラントをめぐる四人にもなり変わってみせます。敬愛する老母、最愛の息子、若く豊かな妻、そして妻の死後伴侶となった愛人。作家は原作を注意深く観察し、個々人の特性とレンブラントとの関係を自作の中で明らかにしました。 「レンブラントの部屋」では、「光と影」がもうひとつの鍵となりました。黒い画布に徐々に明るい色彩を重ね、主題にスポットをあてる劇的な画法、レンブラント絵画の魅力を決定する「闇」に「光」を与える表現です。レンブラントの世界を照らしたろうそくから350 年、放射性物質の閃光に代表される現代の「光」は、その過度な光量ゆえに我々の目を眩ませ、新たな「闇」を生み出しているのではないでしょうか。森村はこの連作の制作を通して抱いた問題意識を「白い闇」と題された作品に託し、展覧会を締めくくっています。本展開催後、全出品作品が原美術館コレクションに収蔵されました。
アーティストについて
森村泰昌 (もりむらやすまさ) 1951年大阪市生まれ。大阪市在住。京都市立芸術大学美術学部卒業、同専攻科修了。 主な個展 2013 「森村泰昌―レンブラントの部屋 再び」原美術館(東京) 「Theater of the Self」ザ・ウォーホール(ピッツバーグ) 「LAS MENINAS RENACEN DE NOCHE 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」資生堂ギャラリー(東京) 2012 「森村泰昌 モリエンナーレ/まねぶ美術史」北九州市立美術館分館(北九州)/静岡市美術館(静岡) 「美術史への誘い」三菱地所アルティアム(福岡) 2011 「肖像経済、その他」BLDギャラリー(東京) 「A Requiem: Art on Top of the Battlefield」ガレリア・ホアナ・デ・アイズプル(マドリッド) 2010-11 「なにものかへのレクイエム‐戦場の頂上の芸術」東京都写真美術館(東京)/豊田市美術館(愛知)/広島市現代美術館(広島)/兵庫県立美術館(兵庫) 「森村泰昌 モリエンナーレ/まねぶ美術史」高松市美術館(香川)/ふくやま美術館(広島) 「その他のチカラ。‐森村泰昌の小宇宙‐」兵庫県立美術館(兵庫) 2010 「なにものかへのレクイエム:外伝」シュウゴアーツ(東京) 2009 「森村泰昌 美に至る病―女優になった私」島根県立石見美術館(島根) 2008 「REQUIEM POR EL SIGLO XX」ガレリア・ホアナ・デ・アイズプル(マドリッド) 「森村泰昌:20世紀へのレクイエム/荒ぶる神々の黄昏」ギャラリー・タデウス・ロパック(パリ) 2007 「荒ぶる神々の黄昏/なにものかへのレクイエム・其の弐」シュウゴアーツ(東京) 「森村泰昌:美の教室、静聴せよ」熊本市現代美術館(熊本)/横浜美術館(神奈川) 「森村泰昌:20 世紀へのレクイエム/荒ぶる神々の黄昏」ベヴィラクア・ラ・マサ財団ガレリア・ディ・ピアッツァ・サン・マルコ(ベニス)/ルーリング・オーガスティン・ギャラリー(NY) 2006 「烈火の季節/なにものかへのレクイエム・その壱」シュウゴアーツ(東京) 「One artist’s theatre」ゲイリー・タティンツァン・ギャラリー(モスクワ) 2005 「諷刺家伝-ゴヤに捧ぐ」シュウゴアーツ(東京)/ギャラリー・タデウス・ロパック(パリ)/ルーリング・オーガスティン・ギャラリー(NY)、ガレリア・ホアナ・デ・アイズプル(マドリッド) 2003 「森村泰昌写真展 卓上のバルゴネグロ」MEM(大阪) 2002 「森村泰昌写真展 女優家Mの物語〔M式ジオラマ(25m)付き〕」川崎市民ミュージアム(神奈川) 2001 「私の中のフリーダ/森村泰昌のセルフポートレイト」原美術館(東京)/ギャラリー・タデウス・ロパック(パリ)/ルーリング・オーガスティン・ギャラリー(NY) 「森村泰昌写真展-女優家Mの物語」えきKYOTO(京都) 2000 「Art History – Yasumasa Morimura」テレフォニカ財団エキジビットスペース(マドリッド) 「名前を持たぬ時間、名前を持たぬ私」チュラロンコン大学(バンコク) 1998 「森村泰昌〔空装美術館〕絵画になった私」東京都現代美術館(東京)/京都国立近代美術館(京都)/丸亀市猪熊弦一郎美術館(香川) 1996 「森村泰昌 美に至る病-女優になった私」横浜美術館(神奈川)/ルーリング・オーガスティン・ギャラリー(NY) 1994 「森村泰昌 レンブラントの部屋」原美術館(東京) 「サイコボーグ マドンナ・マイケル・モリムラの関係」ザ・ギンザアートスペース(東京) 1993 「美に至る病 其の一~五」西田画廊(奈良) 「9つの顔」カルティエ現代美術財団(パリ) 1992 「オプションズ44」シカゴ現代美術館(シカゴ)/カーネギー美術館(ピッツバーグ) 1990 「美術史の娘」佐賀町エキジビットスペース(東京) 1989 「批評とその愛人」モーリギャラリー(大阪) 1988 「マタに、テ」ギャラリーNWハウス(東京)/オンギャラリー(大阪) 1986 「すみれ色のモナムール、その他」ギャラリー白(大阪) 1984 平松画廊(大阪) ギャラリー・マロニエ(京都) 主なグループ展 2009 「愛についての100の物語」金沢21世紀美術館(石川) 2008 「釜山ビエンナーレ2008」Pusan Museum of Modern Art, Gwangalli Beach, APEC Naru Parkなど 「アトミックサンシャインの中へ『日本国平和憲法第九条下における戦後美術』」代官山ヒルサイドフォーラム(東京) 「液晶絵画 Still/Motion」三重県立美術館(三重)/国立国際美術館(大阪)/東京都写真美術館(東京) 2004 「マルセル・デュシャンと20世紀美術」国立国際美術館(大阪)/横浜美術館(神奈川) 「コピーの時代 デュシャンからウォーホール、モリムラへ」滋賀県立近代美術館(滋賀) 2002 「エモーショナル・サイト」佐賀町食糧ビルディング(東京) 「未来予想図 私の人生☆劇場」兵庫県立美術館 芸術の館(兵庫) 2001 「森村泰昌と合田佐和子」高知県立美術館(高知) 1998 「森村泰昌プロデュース テクノテラピー」中之島中央公会堂(大阪) 1996 「Hugo Boss Prize 1996」グッゲンハイム美術館ソーホー分館(NY) 「第10回シドニー・ビエンナーレ」(シドニー) 1994 「Cocide y Crudo」レイナ・ソフィア国立美術センター(マドリッド) 「人間の条件スパイラル(東京)/芦屋市立美術博物館(兵庫) 1992 「森村泰昌・福田美蘭によるスペイン静物画へのオマージュ」、名古屋市美術館(愛知) 「Post Human」FAE現代美術館(ローザンヌ)/カステロ・ディ・リヴォリ(リバプール)、デステ現代美術財団(アテネ)/ダイヒトア・ホール(ハンブルグ) 1991 「キャビネット・オブ・サイン-ポスト・モダン以降の日本現代美術」テート・ギャラリー(リバプール)/ホワイト・チャペル・アート・ギャラリー(ロンドン)/マルメ美術館(マルメ) 「芸術の日常-反芸術/汎芸術」国立国際美術館(大阪) 1990 「Culture and Commentary:An Eighties Perspectives」ハーシュホーン美術館内彫刻庭園(ワシントン) 1989 「Against Nature; Japanese Art in the Eighties」サンフランシスコ近代美術館(サンフランシスコ)/アクロン美術館(アクロン)/マサチューセッツ技術研究所(マサチューセッツ)/リスト視覚芸術センター(ケンブリッジ)/シアトル美術 館(シアトル)/シンシナティ現代美術センター(シンシナティ)/グレイ美術ギャラリー&研究センター(NY)/ヒューストン現代美術館(ヒューストン)、ICA名古屋(名古屋) 1988 「East meets West: Japanese and Italian Art Today, ART/LA 88」ロサンゼルスコンベンションセンター(ロサンゼルス) 「43th La Biennale di Venezia Aperto ’ 88」(ベニス) 「アートナウ ’88」兵庫県立近代美術館(兵庫) 1987 「現代美術になった写真」栃木県立美術館(栃木) 「イエス・アート/デラックス」佐賀町エキジビットスペース(東京)、ギャラリー白(大阪) 1986 「アール・ディフェラン:絵画の異化光景」ギャラリー白(大阪) 1985 「ラデカルな意志のスマイル」ギャラリー16(京都) 1984 「オレ達は寡黙じゃない、わかりますか」ギャラリービュウ(大阪) 主な近著 「森村泰昌/全女優」(2010年/二玄社)、「まねぶ美術史」(2010年/赤々舎)、「露地庵先生のアンポン譚」(2010年/新潮社)「対談 なにものかへのレクイエム/20世紀を思考する」(2011年/岩波書店)など 近年の受賞 2006 年 京都府文化功労賞、2007 年度 芸術選奨文部科学大臣賞、2011 年 第52 回毎日芸術賞、日本写真協会賞、第24回京都美術文化賞を受賞、2011 年秋 紫綬褒章を受章。
スピーカーについて
内田洋子(うちだ・ようこ) 1985年より原美術館(公益財団法人アルカンシエール美術財団)に勤務、現在原美術館副館長、主任学芸員。 「第8回 ハラ アニュアル」展(1988年)、「操上和美 CRUSH」展(1989年)、「李禹煥」展(ハラ ミュージアム アーク、1991年)、「森村泰昌 レンブラントの部屋」展(1994年)、「アラーキー レトログラフス」展(1997年)、「ソフィ カル 限局性激痛」展(1999―2000年)、「私のなかのフリーダ 森村泰昌」(2001年)、「ヴィンセント ギャロ」展(2002年)、「パトリシア ピッチニ―ニ We are Family」展(2003年)、「奈良美智 From the Depth of My Drawer」展(2004年)、「アフリカの二人 オジェイケレとマリック シディベ」展(2004年)、「オラファー エリアソン 影の光」展(2005年)、「ヘンリー ダーガー 少女たちの戦いの物語」展(2007年)などを担当。「空間・時間・記憶―Photography and Beyond in Japan」展(1994年原美術館。後にメキシコ、カナダ、アメリカへ巡回)、「倉俣史朗の世界」展(1996年原美術館。後にメキシコ、アメリカ、カナダ、オーストリア、フランスへ巡回)国際巡回担当。
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